パリへ、生地を探しに2026.2.11(水曜日)
パリへ、生地を探しに。
パリに来て、生地を仕入れるようになって、気づけば12年が過ぎていました。
初めてこの街で生地を見たときのことは、今でも鮮明に覚えています。
街の空気、石畳の音、ショーウィンドウの光。
そして何より、目に入る生地のすべてが美しくて、ただただ心がときめいていました。
「こんな布が、この世にあるんだ。」
そんな驚きと興奮が、胸いっぱいに広がった感覚。
あの瞬間の気持ちは、12年経った今でも変わりません。
ただ、少しだけ…目が肥えてしまったのも事実です。
昔はどんな生地にも感動していたのに、今は「普通の生地」では満足できなくなってしまいました。
これはちょっと問題なのですが…。
でも、きっとそれは、私がこの12年間ずっと生地と向き合い続けてきた証でもあるのだと思います。
生地の美しさだけではなく、織りの密度や質感、光の反射、触れたときの張り。
そして、仕立てたときに生まれる立体感や佇まい。
「美しい」だけでは終わらない、“品格”を持つ生地を探すようになりました。
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今回、そんな私が思い切って足を運んだのは、ずっと敷居が高いと感じていた生地の見本市でした。
実はずっと、
「自分の目で、きちんと見極められるようになるまでは行かない」
そう決めていた場所でもあります。
なぜなら、そこに並ぶのは、世界中の職人やメーカーが誇りを持って作った生地たち。
中途半端な気持ちで見るのは、失礼な気がしていたのです。
でも今回、勇気を出して行ってみました。
会場に入った瞬間、まず圧倒されました。
数の多さはもちろんですが、それ以上に、空気が違う。
生地を見つめる人たちの目が真剣で、熱量が高くて、静かな緊張感が漂っていました。
そして気づきました。
生地を探しに来ているのは私だけではなく、
世界中の“ものづくりをする人たち”が、同じようにここに集まっているのだということ。
バッグ、洋服、靴、帽子、舞台衣装、インテリア…。
ジャンルも国も違うのに、皆が同じように素材と向き合い、真剣に選び、語り合っていました。
それがとても美しくて、心が震えるような感動がありました。
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今回のパリでは、会う人も増えました。
12年という時間は、知らないうちに人とのご縁を育ててくれていたようです。
顔を覚えてくれている人がいて、声をかけてくれる人がいて、
「今年も来たのね」と笑って迎えてくれる人がいる。
それだけで、なんだか胸が熱くなります。
言葉が完璧に通じなくても、
「素材が好き」という気持ちが同じだと、自然に会話が生まれます。
生地の話をしながら、ものづくりの話になって、
気づけば仕事の枠を超えた刺激をたくさんもらっていました。
世界には、こんなにも情熱を持って作り続けている人がいる。
こんなにも素材を愛している人がいる。
そのことが、私にとって大きな励みになりました。
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一方で、日本の現状を思うと、少し切なくなる瞬間もあります。
最近は日本で、金具屋さんをはじめ職人さんが減ってきて、
「もう作れない」
「もう続けられない」
そんな話を耳にすることが増えました。
それは、誰かの努力が足りないという話ではなく、
時代や環境の変化が、静かに積み重なった結果なのだと思います。
でもそのたびに、私は少し不安になります。
日本のものづくりは、この先大丈夫なのかな…と。
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けれど今回、パリで多くの人たちに出会い、刺激を受けて、
改めて思いました。
やっぱり、作り続けたい。
続けていかなければいけない。
日本には、日本の美意識がある。
日本にしか出せない繊細さがある。
そして、京都には京都の空気があり、手仕事があります。
ヨーロッパの上質な生地に、京都の竹を合わせ、
時には漆の艶を重ねながら、和と洋が調和するバッグを仕立てる。
その制作は、私にとってただの仕事ではなく、
「文化と時間をつなぐものづくり」なのかもしれません。
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パリの街を歩いていると、
ふとした瞬間に、12年前の自分がよみがえります。
あの頃の私は、ただ生地が美しいというだけで心がときめき、
その美しさに導かれるように、夢中で歩いていました。
そして今の私は、
その美しさの奥にある“背景”や“技術”や“誇り”まで感じ取れるようになってきました。
目が肥えたというより、
きっと「見る深さ」が変わったのだと思います。
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だからこそ、今回のパリでの仕入れは、私にとって特別でした。
生地を選ぶという行為は、
未来の作品を選ぶということ。
そして同時に、
自分がどんなものを作りたいのかを、もう一度確かめる時間でもあります。
圧倒されながらも、心は静かに燃えていました。
よし、また頑張ろう。
それでも頑張ろう、日本!!
そんなことを思いながら、パリの空の下を歩いています。
~京薫る パリの彩り~
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